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2023.01.20
つぶやき

ふたごじてんしゃを通して、見据えている未来

近い将来から、遠い将来まで。実現したいこと
株式会社ふたごじてんしゃで、これからしていくこと、見据えている未来のことをお伝えしますね。

 

ふたごじてんしゃ草津イベント 大好きな写真のひとつ

 

①電動アシスト付きのふたごじてんしゃの製品化

 
リヤカーメーカさんに1台だけつくっていただいた中原製ふたごじてんしゃは、電動自転車でした。2人の子どもを乗せる上に保育園や幼稚園の荷物を持つ重量感、それで長距離を走ることから、電動アシスト付きは必須と考えていたものの、開発面でのハードルが高かったんです。
 
安全性をどう確保するのか、その構造を実現できる工場はあるのかなど難航。また、これまでふたごじてんしゃの車体づくりをお願いしていた工場が廃業し、新たな工場を探して生産体制を整える必要も出てきたので、時間を要しました。
 
メーカーであるOGK技研さんがさまざまな困難をのりこえ、電動のふたごじてんしゃはもうすぐで完成できるのではないかというところまできています。ただ、車体等は海外で生産するため、新型コロナウイルス感染症の影響でどうなるのかはわかりません。わかり次第、お知らせしますね。
 
電動アシスト付きということで、坂の多い地域や坂の上におうちがあるママパパが期待してくださっているのを感じています。わたし自身、坂道をのぼる大変さを解決できるものになればと願っていたのですが、安全性を考慮した結果、電動であっても「ふたごじてんしゃ」には適さない坂道があることをきちんと伝えていこうと思いました。当たり前のことですが、坂道は登ったら降りてこなくてはなりません。ふたごじてんしゃの構造上、スピードを出すと片輪が浮いて転倒しやすくなることと、電動アシストを付けることで車体重量がより増すので、急な下り坂を降りてくるような坂道のある場所では危険性が高くなるからです。
 
電動アシストは「長距離走行や緩やかな坂道の利用時」に適した設定としています。
 
坂の多い地域や坂の上におうちがあるママパパが移動手段で悩み続けるのかと思うと、心がとても苦しいです。どうしたら解決できるのか、その答えはまだ見つけられずいて、今のところは何もすることができなくて、ごめんなさい。
 
もう一つ。電動アシスト付きになると、価格は高くなります。電動アシスト付きのほうが楽ですが、平坦な道が続く地域で送迎のみの利用でしたら、これまでのふたごじてんしゃのほうがコスパ的にはいいのかなと思っています。
 
 

②ふたごじてんしゃの案内人 ピアナビさん

 
全国各地で、ふたごじてんしゃの試乗を希望される方がいるけれど、すべての自転車屋さんに試乗車を置くことは難しい。頻繁に試乗会をすることも、これまた難しい。これまで、ユーザーさんのご厚意で試乗の機会をつくってもらうこともありましたが、頻繁にお願いできるようになりたいと思いました。
 
また、試乗だけではなく、子どもがぐずった時に話しかけることで緊張をほぐせたり、初めての三輪自転車に戸惑うママを勇気づけたり、安心して乗れるようになるまで見守ったり。さらには、「この地域で乗る時はこの辺の段差に気をつけたほうがいいよ」「子どもはこういう時にこんな行動をとるから、ここを注意深く見ておいてね」という日々の暮らしに即したアドバイス、住んでいるエリアが近ければ「あそこのスーパー、あそこの保育園、あそこの病院が行きやすかったよ」「あそこの坂、あそこの道路は危ないよ」といった地域の情報を共有など、自転車を求める人の新しい可能性を一緒に探し当ててくれるような人が仲間になってくれたらと考えています。
 
そこで、双子ママパパ目線で乗り方や乗せ方、走り方、子どもとのかかわり方などもアドバイスしてくださる役割を担ってくださる方を募集することにしました。「ふたごじてんしゃピアナビさん」です。今年はまず、全国で4人ほど募集します。
 
 

③ママレンタル

 
ユーザーさんから貸し出す仕組み「ママレンタル」をつくりたいです。ふたごじてんしゃは、対象年齢の子どもがいる間はずっと手元に置いておきたいものですが、譲るのではなく、貸し出すという形をとることによって、小学生以下の子どもを育てているママと先輩ママがレンタル期間中はつながり続けることができます。そうすることで、先ほどの「②」のような双子のママパパ目線での乗り方や乗せ方、走り方、子どもたちとのかかわり方のアドバイス、地域の情報共有などをしてもらえる関係性が自然と築けたらいいなぁと考えています。
 
 

④観光地でのシェアサイクル

 
観光地でシェアサイクルを見かけるようになりましたが、子どもを乗せられるシェアサイクルはないんです。大人1人なら自転車に乗ってスイス~イっと移動しながら観光を楽しめるのに、子どもを連れて、たくさんの荷物を持つママパパは歩くしかないなんて…観光を楽しむどころではないですよね。また、観光地にシェアサイクルとして設置されれば、観光しながら試し乗りの機会にもなって、必要な人に届きやすくなると考えています。
 
 

⑤行政からのレンタル

 
ふたごじてんしゃ購入後のアンケートで、ふたごじてんしゃを手にしたことによってどんなふうに生活しやすくなったか、生きやすくなったかを尋ねたところ、6割以上のママパパが「良くなった」と回答しています。
 
この結果からもわかるように、ふたごじてんしゃは単なる“移動のためのツール”ではありません。「双子を連れての移動は大変だから…どこにも出かけられない、出かけることが苦痛だ」というしんどさや大変さを抱えるママパパが、「毎日の送り迎えが楽になった分、子どもとしゃべる余裕が持てた」「少しでも外に出てみようと勇気を持てた」など、“生きやすさをつくるツール”なんです。
 
子育てを支援するものだから、行政がレンタルする意義があると考えています。行政からのレンタルがあれば、必要とする人が利用しやすくもなりますから。
 
 

⑥小学生以上、大人も乗せられるインクルーシブな自転車の開発

 
ふたごじてんしゃの製品化をめざす過程で、双子や三つ子のママパパだけではなく、さまざまな人の悩みや困り事を聞いてきました。その中で、小学生以上、大人も含めて乗せられる自転車があれば、この人やあの人の一日一日が少し楽になるのにと思うことがありました。
 
たとえば、小学生の学童保育の送り迎え。仕事終わりに急いで迎えに行って、疲れている子どもの手を引いて、暗い夜道を歩いて帰る…特に1年生ならすんなりとは歩いてくれないですから。ママパパが家に帰るまでに疲れてしまうだけです。それから食事の準備など、とても余裕が持てません。また、小学生のお子さんがなかなか歩いてくれない、道端で寝転がって泣いてしまうこともある…毎日、その子の手を引いて、小学校に6年間通ったというママもいました。
 
もし、そのお子さんを自転車に乗せて送迎できたら、きっと毎日、体や気持ちが楽になったのではないでしょうか。
 
みなさんも暮らしの中で、こんな時に自転車で移動できたらいいのになぁと思ったことはありませんか?小学生以上の子どもや親の通院、緊急時の対応、家族同然の犬や猫の通院、介護サービスの送迎など、さまざまな場面での不便さ、困り事を聞きます。
 
またもう一つ、理由があります。小学生以上の子どもの自転車乗せという道路交通法違反の行為が行われている現状を何とかしたいです。法律で禁止されていますが、そうせざるを得ない状況があります。みんなが車を持っているわけではありませんし、自転車での移動が便利な場面は通園・通学・通院、送迎、買い物など生活に密着しているんですよね。
 
誰もが、安全に安心して移動できる手段をつくりたい。そのためには、2人乗りが禁止されているこの日本で、小学生以上を乗せられる自転車の開発と、その自転車が走行できる場所(特区)が必要です。この「人が人を支え合うための自転車文化」はつくろうと心に決めているんです。
 
 

「変えられへんものなんてないんや」と思える

 
自分でも「壮大すぎるんちゃう?」とつっこみたくなるようなことも含めてお伝えしてきました。わたしは自転車を設計できるわけでも、法律を変えられるわけでもありません。ですが、もうこの時代に送迎の役割を担わらざるを得ない人の負担をなくしたいのです。誰もが簡易な移動手段である自転車を活用できるようにしたいのです。
 
ふたごじてんしゃをつくった時も、はじまりは家の中で「双子家庭が自由になれる自転車をつくるねん」と心に決めたことでした。何もないところから、そんな壮大なことをやろうとしている自分をなんか恥ずかしいなぁなんて思っていたけれど。あの時に思い描いた未来が、今あります。
 

 
また、各都道府県が定めている道路交通法施行規則や細則では当初、6才未満といった年齢制限がありました。それが、2021年に小学校入学までの子どもは乗せられるように改正されたのをご存じでしょうか。
 
わたしはふたごじてんしゃの製品化をめざす過程で、年齢制限があることを知り、子育て中のママパパの実態とは合っていないので変えられないかと2018年頃から活動し始めました。その中で、警察署員さんや弁護士さん、自転車屋さんにも話を聞きに行きましたが、当時は「法律は簡単には変わらへんで」と言われるばかりだったんです。それが2020年に大分県で改正されたことをきっかけに、全国で改正されていきました
 
驚くような瞬間でした。周囲はそれほどでもないみたいですが、わたしは大興奮していました。みんなが何かしら課題にかんじていて、誰もが無関係なことはなかったんですね。
 
だから、「変えられものはないねん」と思えます。もちろん、簡単には実現できませんから、一緒に考えてくれる仲間の輪を広げていきたいです。
 
わたしはインクルーシブな自転車を、この日本で当たり前にしたいだけなのです。
 
 
中原 美智子
株式会社ふたごじてんしゃ 代表取締役
NPO法人つなげる 代表理事

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