【毎日新聞】藻谷浩介さんから書評いただきました
『ふたごじてんしゃ物語』の書評をいただきました。
今頃、じわじわきてる。
藻谷浩介さんに書評をいただいた。
とてもびっくりしている。
この本を書き始めたと、どんな文体でいくのか揺れたことがある。ビジネス書っぽい文体か、はたまた女性起業家っぽい「あなたならできるわ✨」的なものか。
いずれも私らしくなく、そんなものは偽りでしかなく。だから、そのままのわたしで書きあげることに決めて進めた。
そうすると、ただの行動記録でしかなく、振り返りの中では自分の奥底にしまっていた辛いものに向き合う作業も伴ったりでかなり疲れたし、いろいろ書いたわりには書き忘れていたことに気付いたりと、正直これのなにが面白いのかさっぱりわからない状況に陥っていた。
だけど、藻谷さんに書評をいただいて、「あ、これでよかったんだ」と今更だけどやっと腑に落ちた。
編集者さんよごめん。あれだけわたしを励まし、二人三脚でわたしの横顔をちらちら確認しながら進んでくれたし、穴を掘る作業もともに進んでくれたのに、見ず知らずの他人の言葉で腑に落ちるんかいと突っ込まないでおくれ。
だってね、編集者さんはいつも「借り物の言葉を使わない中原さんは素晴らしい」と感動してくれていて、だからわたしは自分を信じて、バカまるだしだろうと、賢そうに見せることも、大きく見せる必要もなく、イタイわたしでいることができた。だから、あなたと私の間では、こうやって進もうと決めてこの本が完成した。
それに、わたしは「〇〇したらうまくいく」「〇〇しなさい」と、まるで私が正解を知っているように振る舞うことはとてもキライで、それをしたくなかったから、答えが欲しい人にとっては「なんやこれ!答え載ってないやん!」と放り投げたくなるんじゃないかと、ちょっと心配にもなった。
でも実際は、世の中には答えなどなく、結局は自分で見て感じたことを、自分ならどのようにその物事をとらえ、どのように解決すれば自分がめっちゃうれしいかを考えるしかなく、それは誰かに教えられたようなものではないし、しかもこの瞬間からすべての情報は古く、本が完成したときには陳腐なものになっているかもしれないとおもうから、たとえ放り投げられても私の本ではしちゃいけないことだった。
ちなみに、理事を務めている団体(NPO法人つなげる)でも私は答えを教えない。わたしならどうするかは伝えるけれど、そもそも答えなど私には持ち合わせていないからだ。だから、なかにはがっかりして退会する人もいるのだけれど、それはそれで仕方がない。ご縁がなかったのだろう。
さて、この考え方は、編集者さんも同じ感覚だったから、二人で1年かかってこの本を仕上げた。この暗黙の決め事は、誰にも言っていないし、そしてあえて言うつもりもなかった。
なのに、今回藻谷さんがわたしたちがこっそり忍ばせていたものに気付き、しかも絶賛してくれた。
それが何よりもうれしくて、そう考えると、やっぱりわたしは気付いてほしかったんだなと、見栄を張りたがりの自分にちょっと恥ずかしくなる。
それでもまぁいいよね!だって、気づいてくれる人がいるって、うれしいんだもの。
藻谷さん、ありがとうございました!
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毎日新聞 今週の本棚 (2022年10月1日)
藻谷浩介・評 『ふたごじてんしゃ物語』=中原美智子・著
<一部抜粋>
一主婦が疑問を持ち、行動し、結果を自省し、再挑戦する中で発した自問自答で、全編が埋め尽くされている。自身の行動記録だからこその、借り物の言葉の一切ない文体が、本書の最大の味わいだ。
https://mainichi.jp/articles/20221001/ddm/015/070/014000c